工作機械や業務用小型プリンターのメーカーとして、国内外に生産・販売拠点を展開するスター精密株式会社は、主力製品の工作機械は世界トップクラスのシェアを誇るものの、その仕様書や取扱説明書は長らく紙媒体で作成され、製品使用時のユーザビリティに課題を抱えていました。
そこで、ユーザーが知りたい情報を一括収集できる会員制ポータルサイトの開発に着手。パートナー選定では5社を比較検討し、全員一致で1位評価をつけたのがSITEMANAGEです。
今回は、サイト構築や運用に携わる機械事業部 向山様、井上様、渡辺様、太田様、増田様、に、SITEMANAGE導入の決め手や開発時のエピソード、リリース後の成果などについて詳しく伺いました。
サイト紹介
工作機械を使用している国内ユーザー、協力会社、商社・販売代理店およびスター精密社内に向けた会員制ポータルサイト。過去35年間・100機種以上の工作機械の資料のダウンロードが可能で、オンラインサポート機能も実装。お役立ち動画は教育コンテンツとしても活かされています。
主な機能
- 機械納入履歴の確認
- 各種資料のダウンロード
- オンラインサポート機能
- お役立ち動画の閲覧
- パーツリストの検索
- ソフトウェアライセンスの発行受付
- 新製品情報のリアルタイム発信
目次
「見たい・知りたい・頼みたい」を実現する会員制ポータルサイト
―はじめに、スター精密の事業内容をご紹介いただけますか。

向山様:当社の事業は大きく2つあり、1つはものづくりの現場で使われる工作機械を製造販売する機械事業、もう1つはレシート発行に使われる小型プリンターなどを製造販売する特機事業です。
早くからグローバル戦略に乗り出したことでユーザーは世界各国に広がり、工作機械の年間販売台数は国内外合わせて約4,000台あります。

―今回、SITEMANAGEを使って運用しているサイトはどのようなものでしょうか。
向山様:工作機械を使用している国内のお客様に向けたポータルサイトです。納入機械を把握し、使いこなしていただくためのあらゆる情報をアップしています。どの機種が何台納入されているのかという基本情報の確認、それに付随する仕様書や取扱説明書のダウンロードが可能で、お客様の「見たい・知りたい・頼みたい」をオンラインで叶えられるサイトです。

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集約したデータは過去35年分、100機種以上の情報におよびます。操作方法などについては新たに動画コンテンツを制作し、閲覧できる仕組みにしました。機械不具合時のオンラインサポート機能、スペアパーツ発注時に役立つパーツリストなども搭載しています。

増田様:動画コンテンツは70種類ほど制作し、操作パネルの使い方、プログラミングの組み方、メンテナンス方法などを動画にしました。これを見れば、新入社員でも機械を扱える内容になっていると自負しています。
紙ベースの資料のデジタル化とオンラインサポートの実現が急務
―SITEMANAGEを導入してポータルサイトを立ち上げる以前は、どのような課題を抱えていましたか。

井上様:工作機械の品質には自信を持っていましたが、情報提供に課題がありました。特に仕様書や取扱説明書は紙ベースだったので、使用者一人ひとりに届けるのは困難ですし、検索性も高くありません。情報をデジタル化し、ユーザビリティを向上させたいという思いが第一にありました。
向山様:特機事業部では製品の性質上、システム化が進んでいましたが、我々の機械事業部は旧態依然とした体制で、かつ業界的にもDX化が遅れているのが現状です。サポートサイトを立ち上げている競合他社が増えてきて、早期に対策を講じる必要性がありました。

太田様:機械の使用方法や不具合時の窓口は主にコールセンターが担っており、連休明けには100件を超える問い合わせが入ることもあります。取扱説明書を見てくだされば解決する問題も多いのですが、やはり困ったときに紙の資料をめくって確認するのは時間がかかります。コールセンターの負担も大きく、電話がつながらないという状況を一刻も早く改善する必要がありました。
また、お客様の製造現場は夜間も稼働していますが、当社は夜勤がありません。365日24時間対応できるオンラインサポートが必要だと考えました。
向山様:工作機械は生産材ですから、機械が止まる時間=損失であり、お客様にとって切実な問題です。
―サイト開発にあたり、どのような流れでプロジェクトを進めましたか。
向山様: プロジェクトチームを発足したのは3年前の2022年。ツテやWebを駆使してサイト制作会社を20社ほどピックアップし、まずは情報収集ということでシフトさんにもお声がけさせていただきました。
立ち上げ当初は我々もやりたいことがぼんやりとしていて、それこそ夢のようなアイデアもたくさん上がり、一時期プロジェクトが頓挫しかけたことがありました。そこで、2023年6月に情報システム部の井上に参画してもらい、実現可能な方向へと軌道修正したのです。
井上様: スモールスタートかつクイックスタートで立て直す必要があったので、まず欲しい機能を選別し、そぎ落とす作業から始めました。機能や画面のイメージなどを詰め込んだ60ページほどの提案依頼書を作成し、パートナー候補の企業様に配布。これが2023年の7月上旬のことでした。

重森 スター精密さんの提案依頼書は非常に読み応えのあるものでした。提案依頼書を受け取った当日に上村と会議室に閉じこもり、アイデアを出し合ったことを覚えています。その後も社内MTGを重ねて提案依頼書を読み解き、提案内容をまとめていきました。デザインも2パターン作成し、最終的に100ページを超えた提案書になりました。

上村: とにかくボリュームのある提案依頼書だったので、私たちも頑張ろう!と気合が入りました。
―パートナー選定はどのような基準で行いましたか。
井上様:各社からご提案書をいただき、それをプロジェクトメンバーで精査して最終的に5社に絞り、2023年8月末にコンペを実施しました。
当社の要求に対する理解度とアプローチ、デザインコンセプト、開発期間、開発基盤、開発費用、開発体制、保守費用と機能、プレゼン内容などあらゆる判断基準で採点させていただきました。採点結果は、全員一致でシフトさんが一位でした。
―その決め手はどのような部分でしたか。
井上様:開発費用と開発期間、実績のあるCMSである点です。シフトさんの提案は「このツールを使ってこういうサイトをつくります」という道筋が明確で、リリースまでの段取りや完成後のイメージがしやすく、スモールスタートで段階的に拡張できることに魅力を感じました。
向山様:提案書やプレゼンからも熱意を感じ、真摯に取り組む姿勢が伝わってきましたね。
重森: シフトとしても提案依頼書に記載されている内容から、より運用を考えた提案をさせていただきました。どうしてもご一緒にお仕事をしたかったので想いが伝わってよかったです。

安野:きっちりと書かれた提案依頼書から始まり、内容の濃いお打ち合わせを重ね、プロジェクト自体は非常に緊張感がありましたが、その分やりがいもありましたね。
開発フェーズを3段階に分け、スモールスタートにこだわった
―SITEMANAGEの導入決定からリリースまでの主な流れを教えてください。
井上様:会員制ポータルサイトのお披露目は、東京ビックサイトで開催される工作機械の見本市「JIMTOF」でした。開発のフェーズを3段階に分け、少しずつリリースしていきました。第1フェーズの期限は2024年11月で、実際の運用は2025年1月に設定しました。

第1フェーズでは、当社側からユーザーに向けての単方向の情報発信に限定。第2フェーズでは、ユーザー側から当社へリクエストを出し、システムを介して回答するシナリオ型のFAQを実装しました。第3フェーズは双方向でコミュニケーションできるサイトへ拡張。AIチャットボットの活用を検討し、ゆくゆくは海外ユーザー向けに多言語化も視野に入れています。
―第1フェーズのリリースを目指し、具体的にどのように進められましたか。
重森:開発に着手してからの約1年間は、ほぼ毎週オンラインでお打ち合わせさせていただきましたね。
上村:打ち合わせの中で質問に答えてくださり、その場で回答が出なかったものは翌週までにきっちりと揃えてくださったので、我々としては非常にスムーズでした。
井上様:提案依頼書の策定にあたりプロジェクトメンバー間の意思共有ができていましたし、ご提案内容もきめ細やかだったので、答えの出しやすい条件が揃っていたことが勝因かなと思います。シフトさんとの認識の齟齬や予期せぬトラブルはほとんどありませんでした。
―逆に苦労されたことや改善点はありますか。
安野:今回は納入ユーザーと納入機械をつなげる仕様にしましたが、引っ張るデータがそれぞれ異なる仕組みで構築されていたので、うまく紐付けできるか不安でした。でも、情報システム部のお二人がチームにいらしたので、大きな問題もなくリリースできました。
インフラ面では、当初の想定よりも早くサーバー容量を増強する必要が生じた点が改善点として挙げられます。当社側としてももう少し詳細に確認をしておくべきでした。
井上様:サーバー容量に関しては想定より書類系ファイルのデータ量が多かったのが主な要因だと思います。すでに運用しているシステムの載せ替えではない限り、サーバー容量は正確に読めないことが多いので。ただ柔軟にスペックを変更できるのはクラウドサーバーを利用していた大きなメリットです。また、サーバーのセキュリティ対策をしっかりと講じられたこともよかったですね。
登録ユーザー数は目標の2倍以上のスピードで達成
―運用を開始してから半年ほど経ちましたが、どのような成果を感じていますか。

井上様:2025年6月時点で登録ユーザー数が170を超えました。当初は12月末までに100ユーザーを獲得するのが目標でしたので、この調子でいけば倍の200ユーザーは獲得できる見込みです。
太田様:コールセンターへの問い合わせは依然として多いものの、オンラインサポート窓口に問い合わせが寄せられています。これまでは修理に来てほしいという要望がありましたが、現在は「動画を一度見てください」で解決することが増えました。
ただ、パソコンからの閲覧数が多いので、まだまだ現場で見られていないと推測できます。もっと現場からのログインが増えるようなPRの必要性は感じています。
向山様:サイトリリース後はお客様から「便利だね!」「新入社員の教育に役立っているよ」や「こういうコンテンツも欲しいな」などのお声が寄せられ、励みになっています。営業部の仕事はできて当たり前の世界ですから、ここに喜びを感じる方は案外多いのではないでしょうか。

渡辺様:運用してみて感じるのは、SITEMANAGEは非常に使い勝手のよいCMSだということです。ITの知見がなくても感覚的に操作できます。また私自身、昨年4月に入社した転職組なので、自社の機械についてイマイチ理解できていない部分があるのですが、掲載されている動画コンテンツが自社製品の理解に役立っています。

増田様:私はJIMTOFでアテンドを担当した際、商社の方から「よくある問い合わせに対して動画をご案内できると負担が減って助かるよ」というお声をいただいたのが嬉しかったです。
機能を拡張し、顧客満足度と付加価値の向上を目指す
―今後、SITEMANAGEで実現したいことは何でしょうか。
太田様:目下の目標はFAQの実装です。2025年10月に開催される「メカトロテックジャパン」でポータルサイトの新機能をリリースする予定なので、そこに間に合うよう準備を進めています。
井上様:FAQが完成したら、第3フェーズとしてユーザーと当社が双方向でコミュニケーションをとれる機能を追加していく予定です。順次さまざまなコンテンツを実装し、顧客満足度の向上、スター精密の付加価値向上を目指していきます。
―SITEMANAGEはどのような企業におすすめでしょうか。
渡辺様:システムに詳しくない社員が多い企業でしょうか。今回は情報システム部がチーム入りしましたが、たとえば総務部の方々だけで構成されたチームでも開発・運用が可能です。当社の子会社でコーポレイトサイトの開発案件があり、総務しかいないチームでしたが、問題なくSITEMANAGEを導入することができました。
井上様:フルスクラッチだと時間も予算も多くかかりますが、SITEMANAGEは柔軟に取捨選択できるプラグインが豊富なので、スモールスタートしたい企業にも合っていますね。やりたいことを即座に実現できますし、希望すればオリジナル機能の開発もできます。リリースのタイミングが決まっている、あるいは要件定義や予算組みをフェーズに分けて行いたい場合は、ぜひ検討してほしいです。

担当者からコメント
スター精密様の会員制サポートサイト構築という重要なプロジェクトをご一緒できたこと、大変光栄に思います。
目標を大きく上回る結果となった上に、エンドユーザー様からの喜ばしい声も伺うことが出来て大変嬉しく思います。
工作機械という専門性の高い商材と、会員の種別に応じた情報の出し分け、そして外部連携といった多岐にわたる要件があり、いつも以上に詳細な検討を重ねました。このプロジェクトを通して私自身も非常に勉強になりましたし、提案からリリースまで楽しくお仕事させていただきました。
今後も機能拡張を通じて、さらにお客様の満足度向上と、スター精密様の付加価値向上に貢献できるよう、弊社も引き続き尽力してまいります。
SITEMANAGEはパッケージの利点と、スクラッチ開発の柔軟性を兼ね備えたCMSです。スモールスタートで段階的な拡張を検討している方や、DX化でお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください!